川柳さろん 洋子の部屋Ⅱ

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2020-09-23 (Wed) 15:42

足踏みオルガン

 この間、テレビドラマを見ていたら、珍しい事に、小道具として足踏みオルガンが出てきた。なつかしいそのオルガンにしばらく目が停まってうごかなかった。私が持っていたのは、桜の木で造ったという艶やかな木製のものだった。たしかヤマハオルガンのそれだった。小学三年生の時、縁故疎開で田舎の叔父の家に転居したのであるが、京都府相楽郡の上狛国民学校に転入した。その小学校の体育館には、将来特攻隊の隊員に抜擢されるような予科練の兵士たちが滞在していた。一ヶ月に一日ぐらいは、休日と称して、村の家々に遊びに訪れた。私などは多分、妹に思えたらしく、何かと可愛がってくれた。そして その足踏みオルガンを演奏して楽しんでくれた。家の近くの谷川で海老や蟹取りをして遊んでくれた。子供心には解からなかったが、あの若者たちは、いつ戦地にやられるかもしれない身を案じながら、故郷を思いあぐんでいたに違いない。若者たちのその頃の気持を思うと、やりきれない思いにさいなまされる。足踏みオルガンの豊かな音色は近ごろさっぱり耳にしないが、脚も手も懸命にうごかさなければ、豊かな音色は聞かれなかった。
 電子オルガンのようにキンキン響く音色ではなかった。予科練の生徒と足踏みオルガンは私の忘れられない思い出である。

      予科練の七つボタンとオルガンと            洋子
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最終更新日 : 2020-09-23

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